NIPT/妊婦健診と胎児ドックの違い

胎児ドックと妊婦健診

胎児ドックと妊婦健診は、いずれも妊娠中に行われる検査ですが、目的や頻度、内容などが異なります。

胎児ドック

胎児ドックは、胎児健診とも呼ばれ、胎児の成長や発育を幅広く理解することを目的として行われます。「ドック」という呼び名から想像されるように、人間ドックの胎児版と捉えるとわかりやすいかと思います。大人の人間ドックでも、検査したい内容に応じて、「血液検査」「エコー検査」「胃カメラ」「大腸カメラ」「CT検査」「MRI検査」などを組み合わせるのと同じように、胎児ドックで用いる検査方法も様々あります。

最も重要な検査手法がエコー検査です。一般に妊婦健診で使用される超音波機器よりも多機能かつ精密で、胎児の細かな構造や機能を評価することができます。羊水検査や絨毛検査、胎児CT検査などは、エコー検査でなんらかの疾患を疑ったときの精密検査に用いられることが多い検査です。

心臓病などの生まれつきの病気が、胎児期に診断されずに生まれた場合、出生直後に赤ちゃんの具合が悪くなることがあるため、胎児が安全に生まれて来れるように、諸外国では胎児ドックを受けることが一般的となっています。また、胎児期にわかっていれば胎児治療を受ける選択肢も生まれます。生まれつきの病気や症候群のほとんどは母体年齢に関わらず起こるため、欧米諸国では全年齢の妊婦が胎児ドックを受けています。日本では、胎児の健康状態を調べること自体がタブー視されてきた歴史的背景もあり、標準的なマタニティーケアの中には組み込まれていないどころか、医療者からの情報提供がほとんどされないような制度となっていました。2022年にこの方針が変わりましたが、まだ現場に浸透はしておらず、胎児の健康状態を総合的に知りたい方は、自ら調べて胎児ドックを受ける必要があります。

胎児ドックと混同しやすい用語として、「妊婦健診」「出生前検査」「出生前診断」「新型出生前検査(NIPT)」とこともありますが、どのような場面で使われることが多いか解説していきます。

妊婦健診

妊婦健診は、妊娠中の母体の健康状態、胎児の成長を確認するために行われるもので、正式名称は「妊婦一般健康診査」といいます。妊婦健診は妊娠初期から定期的に行われます。妊娠経過に合わせて、エコー検査、母体体重測定、血圧測定、尿検査、血液検査、胎児の心拍数や成長状況などのチェックが行われます。また、妊娠中の健康管理や出産準備に関する情報提供も行われます。

保険適応ではなく自費診療で行われますが、公費負担があります。千葉市を例にすると、母子健康手帳交付の窓口でもらう「受診票」を利用することで、14回までの受診で毎回4500円〜20500円の助成があります。実際にかかる健診費用が公費負担額を超える場合は、超えた部分は自己負担となります。

(参考:千葉市HP https://www.city.chiba.jp/hokenfukushi/kenkofukushi/shien/ninpukensin.html)

また、厚生労働省の示す、妊婦健診の例はこのようになっており、自治体によって多少の差異はあっても、「妊娠中の母体の健康状態、胎児の成長を確認する」という目的は変わりません。妊婦健診でも胎児ドックでも、エコー検査を行うため違いがわかりにくいかと思いますが、その目的と細かさ、使用する超音波機器の精度などが大きく異なります。

日本産科婦人科学会が数年おきに公表している診療ガイドラインによると、胎児形態異常診断を目的としたエコー検査は「胎児エコー検査」と呼ばれ、全妊婦を対象とした標準検査ではないとしています。妊婦健診で行われる「通常エコー検査」は、妊娠部位の同定や胎児数の確認、卵巣異常の発見、胎児の向き、胎盤の位置、早産兆候の発見などが目的とされており、胎児異常の発見を目的としていないのがポイントです。妊婦健診でどのていど細かく胎児を見ているかは、医療機関や胎児の向きによっても異なるため一概には言えませんが、妊婦健診で「順調ですねー」と言われたからと言って「赤ちゃんに病気がないようで安心」とは言えないことは知っておきましょう。

※このテーブルは横にスクロール出来ます。

期間 妊娠初期~23週 妊娠24週~35週 妊娠36週~出産まで
健診回数
(1回目が8週の場合)
1・2・3・4 5・6・7・8・9・10 11・12・13・14
受診間隔 4週間に1回 2週間に1回 1週間に1回
毎回共通する基本的な項目

健康状態の把握…妊娠週数に応じた問診・診察等を行います。
検査計測…妊婦さんの健康状態と赤ちゃんの発育状態を確認するための基本検査を行います。
基本検査例:子宮底長、腹囲、血圧、浮腫、尿検査(糖・蛋白)、体重(1回目は身長も測定)
保健指導…妊婦機関を健やかに過ごすための食事や生活に関するアドバイスを行うとともに、妊婦さんの精神的な健康に留意し、妊娠・出産・育児に対する不安や悩みの相談に応じます。また、家庭的・経済的問題などを抱えており、個別の支援を必要とする方には、適切な保健や福祉のサービスが提供されるように、市町村と保健師等と協力して対応します。

必要に応じて行う医学的検査
  • 血液検査(初期に1回)
    血液型(ABO血液型・Rh血液型・不規則抗体)、血算、血糖、B型肝炎抗原、C型肝炎抗体、HIV抗体、梅毒血清反応、風疹ウイルス抗体
  • 子宮頸がん検診(細胞診、初期に1回)
  • 超音波検査(期間内に2回)
  • 血液検査(期間内に1回)
    血算、血糖
  • B群溶血性レンサ球菌(期間内に1回)
  • 超音波検査(期間内に1回)
  • 血液検査(期間内に1回)
    血算
  • 超音波検査(期間内に1回)
  • 血液検査(妊娠30週までに1回)
    HTLV-1抗体検査
  • 性器クラミジア(妊娠30週までに1回)
 

*参考:妊婦健診で見るポイントとFMF胎児ドックで見るポイントを比較した表

https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/boshi-hoken13/dl/02.pdf

胎児の病気

表の見方 ◎:感度 80-100%、 ◯:感度50-80%、 △:感度10-50% 空欄:不明 or 感度10%以下

※このテーブルは横にスクロール出来ます。

 大分類  詳細確認項目 初期 中期 わかる病気の代表例
染色体異常の
可能性評価
ダウン症 ダウン症候群
13トリソミー 13トリソミー
18トリソミー 18トリソミー
頭部 頭蓋骨 無頭蓋症(無脳症)、脳瘤、頭蓋骨早期癒合症
脳の左右差 Hemimegalencephaly(片側巨脳症)、脳腫瘍
脳梁   脳梁欠損、脳梁低形成
側脳室   側脳室拡大、水頭症
第四脳室   ジュベール症候群
小脳 小脳低形成、小脳出血
小脳虫部   Dandy-Walker Malformation(ダンディー・ウォーカー症候群)、小脳虫部低形成
大槽 開放性二分脊椎、Blake’s Pouch Cyst
脳溝   滑脳症、Hemimegalencephaly(片側巨脳症)
中大脳動脈   胎児貧血
Wilis動脈輪   ガレン大静脈瘤
脳梁周囲動脈   脳梁欠損、脳梁低形成
両目 無眼球症、単眼症、眼窩間狭小、眼間開離
口唇 口唇裂
上顎 口蓋裂
下顎 無顎症、小顎症
鼻骨低形成、無鼻症、単鼻腔
耳介低位、耳介欠損
頸部 頸部肥厚 NT肥厚、ヒグローマ
頸部腫瘤 奇形腫、血管腫、脂肪腫
胸部 両肺 CHAOS、BPS、CPAM
肺肝境界 横隔膜ヘルニア、横隔膜弛緩症
胸郭 胸郭低形成
胸水 胎児胸水
心臓/血管 心拍 子宮内胎児死亡、胎児不整脈
向き ファロー四徴症
位置 右側相同、左側相同、横隔膜ヘルニア、肺欠損、肺腫瘍
大きさ 心拡大、心肥大
左右心室 単心室、左心低形成、右心低形成
大血管の交差 完全大血管転移
大動脈 大動脈縮窄症、ファロー四徴症、大血管転移
肺動脈 肺動脈閉鎖症、大血管転移
動脈管     動脈管早期閉鎖
三尖弁 三尖弁閉鎖、Ebstein奇形、三尖弁逆流
僧帽弁 僧帽弁閉鎖、僧帽弁逆流
三尖弁・僧帽弁の位置 房室中隔欠損症
大動脈弁 大動脈弁狭窄、閉鎖、閉鎖不全
肺動脈弁 肺動脈弁狭窄、閉鎖、閉鎖不全
肺静脈 総肺静脈還流異常症
鎖骨下動脈 鎖骨下動脈起始異常
3VV
(主肺動脈・大動脈・上大静)
ファロー四徴症、完全大血管転移
3VTV
(動脈菅弓・大動脈弓)
完全大血管転移、大動脈離断、左心低形成症候群、大動脈縮窄複合症
心室中隔   心室中隔欠損(VSD)、房室中隔欠損症
心房中隔   心房中隔欠損(ASD)、卵円厚閉鎖、房室中隔欠損症
腹部 左側相同、右側相同、食道閉鎖
腹壁 腹壁破裂、臍帯ヘルニア
胆嚢 胆道閉鎖、胆道拡張症
臍帯静脈   右臍帯静脈遺残
静脈管 静脈管欠損、静脈管逆流
膀胱 巨大暴行、腎無形成、膀胱外反
副腎   副腎腫瘍、副腎出血
腎臓 腎無形成、馬蹄腎、水腎症
尿管   尿管膀胱移行部狭窄
腹水 胎児腹水、胎児貧血
脊椎 頚椎 Hemivertebra、二分脊椎、脊髄髄膜瘤、髄膜瘤、脂肪腫、奇形腫、側弯
胸椎
腰椎
仙骨
背部表面
四肢 上腕 欠損、内反、合指、多指、変形、骨折、拘縮
前腕(橈骨・尺骨)
手掌
手指
大腿
(脛骨・腓骨)
足/足首
外性器 外性器 外性器の異常
臍帯 臍帯 臍帯嚢胞、尿膜管遺残、臍帯過捻転、臍帯過少捻転、前置血管
臍帯動脈 単一臍帯動脈
羊水 羊水過少、羊水過多
羊膜 羊膜 Body-stalk anomaly、羊膜索症候群
胎盤 位置 前置胎盤、低置胎盤、臍帯付着部異常、
性状 胎盤腫瘍、癒着胎盤
その他   三倍体
子宮動脈 子宮動脈 妊娠高血圧腎症、子宮内胎児発育不全の予測

FMFチェック項目

出生前検査

出生前検査の広義の意味は「出生前に胎児や胎盤に異常がないかを調べること」なので、本来は胎児ドックに近い概念です。しかし、「出生前検査受けようか悩む」「当院では出生前検査をやっています」などと言う時には、「ダウン症候群の検査」を指すことが少なくないため注意が必要です。

また、妊婦健診を行う医療機関で「出生前検査受けますか?」と言われる場合には、NIPTやクアトロテストなど一部の検査を指していることもあります。妊娠中に数回「胎児スクリーニング」をしていますという場合には、「いつもより細かくエコー検査をします」という意味で説明されることが多いでしょう。いずれにしても、なにか一つの検査を受ければ全てがわかるものではないのが出生前検査の特徴ですので、今受けるかどうか考えているその検査が、何をどの程度調べられる検査なのかを理解することが大切です。

出生前診断

出生前診断は、出生前に胎児や胎盤に異常がないかを調べる検査(出生前検査)のうち、確定診断になるものを指します。通常、なんらかの疾患や症候群が診断されるとき、まずは疑い、疑わしければ確定するという流れを取ります。

ダウン症候群を例にとると、「エコー検査で首のうしろの浮腫を認めたためダウン症候群が疑わしい状態となり、確定検査として羊水検査を行う」という流れとなることがあります。このとき、エコー検査・羊水検査のどちらも出生前検査です。しかしエコー検査では診断に至らず、羊水検査が出生前診断の方法となります。

出生前診断の方法は必ずしも羊水検査ではありません。心臓病や無脳症などはエコー検査が出生前診断の方法となります。先天性サイトメガロウイルス感染症を疑うような時には、羊水検査とエコー検査を組み合わせたり、場合によっては臍帯採血によって胎児の臓器障害を評価することで出生前診断を行います。

NIPT(新型出生前検査)

NIPT(新型出生前検査)は、母体血のみを用いて胎児(胎盤)に、21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、13 トリソミー(パトゥ症候群)などがないかを調べる検査です。生まれつきの病気や症候群のうち約2割弱が、NIPTでわかります。あくまでも胎盤の情報を調べるため、「陽性」という結果がでても100%の診断にはなりません。特に、近年無認可施設で行われる全染色体を対象としたNIPT検査は、陽性結果をもらってもそのほとんどの場合は胎児に異常がなく、出生後も全く正常の発達をします

まとめ

胎児ドックは、胎児が健康に育っているかを調べるために行われます。妊婦健診やその他の出生前検査と比較すると、胎児の状態を幅広く理解し、必要に応じてより細かな検査に進んでいく可能性のある検査です。胎児ドックを受ける目的は様々です。胎児が安全に生まれて来れるように、出産場所やタイミングを考えるために受けることもあります。中には胎児治療をすることで、赤ちゃんにとって生後の生活の質が改善することもあります。長くは生きられないという病気が見つかった時に、いつどのタイミングでどのようにお見送りをするのかを考えたり、限られた時間を大切に過ごす方法を考えるときもあります。

いずれにしても、まずは「胎児のことを知る」ことで、いろいろな可能性を考えるための検査と言えるでしょう。

  • WEB予約予約・問い合わせはLINEから
  • 出産予定日・週数計算出産予定日・週数計算
TOPへ