男性が胎児に与える影響

男性の年齢

男性と女性では配偶子(男性は精子、女性は卵子)をつくる過程が違うため、染色体・遺伝子に与える影響が異なります。
女性の場合、胎児期に卵子のもとである卵母細胞に体細胞分裂(卵細胞が増える)が起こります。思春期になると、一部で減数分裂(染色体を分ける作業)が再開し、排卵が起こります。減数分裂が再開されるまでの期間が長い卵母細胞ほど、減数分裂時に染色体の不分離が生じ、それに伴い胎児にトリソミーが発生します。
男性では、精子のもとである精原細胞が、思春期以降に減数分裂が再開します。減数分裂の回数が多いほど、遺伝子にエラーが起きる頻度が上がります。

1)ダウン症候群などの染色体異常

ダウン症候群(21トリソミー)・18トリソミー・13トリソミーの頻度は、女性の年齢には関連しますが、男性の年齢は影響しません。そのほか、トリソミー等の常染色体の数的異常の発生率も増加します。また、性染色体(X・Y染色体)の数的異常も関連はしますが、増加する割合はわずかです。
その他の染色体異常(欠失や重複)については、女性・男性どちらの年齢も影響しません。

2)遺伝子疾患

遺伝子の変化によって起こる遺伝子疾患の頻度は、男性の年齢と関連します。ただし、遺伝子疾患の頻度は高いもので1/3000人程度であり、男性の年齢が上がると頻度はわずかに上昇する程度に留まります。

男性の服用薬

男性が薬剤を服用することで、胚や胎児へ影響を及ぼす可能性について示すデータはほとんどありません。
ただし、理論上は胎児に催奇形性を及ぼす可能性があります。

遺伝毒性のある薬剤

精子がつくられる日数(約74日)を考慮すると、精子への影響があるとすれば服用から3ヶ月後です。心配がある場合には、内服から3ヶ月程度は避妊するのがよいでしょう。

①精子への影響

抗がん剤など一部の薬剤によって、DNA損傷が起こることが報告されています。DNA損傷の起こった精子は、損傷が修復されるか、精子自体が細胞死するか、修復されずに残ります。
ただし、DNA損傷が修復されずに残る精子はごく一部です。

②精液への薬剤の移行

精液へ薬剤が移行し、妊婦に吸収されることで胚・胎児へ影響を及ぼす可能性があります。そのため、心配のある場合には、コンドームを使用しての避妊が望ましいでしょう。
ただし、男性が薬剤を内服してから、男性の体内への吸収→精液へ移行→性交渉により膣粘膜より女性の体内へ吸収→卵子や胎児が暴露するという順序をとるため、卵子や胎児への移行量は内服量よりも減少します。

*遺伝毒性:化学物質等が直接的もしくは間接的にDNA・染色体に影響を与える性質。薬剤では、アルキル化剤といった抗がん剤が代表的です。

発生毒性のある薬剤

遺伝毒性のある薬剤同様に、精液へ薬剤が移行し、妊婦に吸収されることで胚・胎児へ影響を及ぼす可能性があります。コンドームを使用し、最終服用から血液中の消失期間(薬剤の半減期×5)で避妊するのがよいでしょう。

*発生毒性:化学物質等が生殖や発生に影響を与える性質。

常備薬として使われることの多いロキソプロフェン(ロキソニン®︎)等の、遺伝毒性・発生毒性も有さない薬剤も多くあります。妊婦さんも、パートナーの方も、何らかの症状に対して薬剤を内服をする前には、禁忌事項を確認してください。
また、がん治療をされている場合、上記の可能性を考慮し、コンドームでの避妊を行うのがよいでしょう。

がん治療

抗がん剤などがん治療は、胚や胎児へ影響へ影響を及ぼす可能性も否定はできませんが、精子形成などにも影響があるため、妊娠を望んでいる場合には主治医と相談することをお勧めします。

①薬物療法

抗がん剤は、がん細胞の分裂を抑制するために細胞にダメージを与えるという機序をとります。そのため、化学療法により精巣の萎縮や精子の減少がみられます。治療後は、精子の数が変わらない場合もあれば、回復してくる場合もあります。
内分泌療法は、男性ホルモンの産生を抑制するため、性欲の減退や精子形成の機能が低下がみられます。
分子標的薬は、標的とする細胞のみにダメージを与えます。まだデータは少ないですが、あまり影響はないといわれています。

②放射線治療

放射線治療を腹部や骨盤部に対し行った場合にも、精子形成に影響がでます。
照射される放射線量が多いほど、影響も大きくなります。放射線量によっては、治療後に無精子症が続く場合もあります。将来、お子さんを考えていらっしゃる場合には、治療前に主治医とご相談ください。

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